佐竹、鮨ばんどと江戸前寿司の記事が続いております。やはり、お鮨は美味しいですものね。ついつい、お寿司屋さんに通いたくなる気持ちはわかります。
とはいえ、昨今の鮨バブルともいうべき状況は、目に余るものがあります。1人、2~3万それ以上の勘定はあたりまえ、鮪やウニなど味の濃い、脂の強いタネを乱発する、つまみ込みお決まり一本やりの押しつけがましさ。そして、どこに行っても赤酢の酢飯、鮨界のマタオマ系ですね。
食は時代と共に変わるとは言うものの、渋くて濃い、熱いお茶で握りを好きなように食べるという、古来伝統の江戸前スタイルが滅びるのは悲しいものです。全国的なつくり手としては江戸前寿司隆盛というのに、食べるスタイルとしての江戸前がどんどん廃れていくのは何故か、示唆に富んでいます。
そんな中で、数少ないお好みで食べることのできる江戸前寿司の一軒がこちら鶴八分店。
訪問当日もカウンター7席のうち5席で、握りからスタート、それもお好みで、という状況でした。夕食でしたが、お茶でお寿司を召し上がっている方が複数いらっしゃいました。
鶴八分店のお好み鮨
2017年11月に食べたもの。
すみいか
ひらめ
ひらめ昆布〆
さより
しまあじ
かつお
づけ(まぐろ赤身)
みる貝
こはだ
小柱
赤貝
はまぐり
いくら
車海老
しゃこ
たこ
あなご
(順不同)
握りは、かなりしっかりと大きめ。酢飯は硬めに炊かれていて白酢です。鮨だねも大振りですが、それに合うようにバランスよく味付けされています。
きちんとした食事になる、江戸前の寿司です。
率直に書けば、寿司だねについては、確かにマグロは超一流のそれと比べると一歩譲るかもしれません(とはいえ、厳選された上物です)。
でもその他、白身や貝、うに、光物なんかは、こちらの何倍もの勘定をとる某有名店と同じ仕入先だし(上物を扱う仲卸なんて、築地にもそうそう何軒もありません)、むしろマグロやら、うにやら、買ってのっけるものではない、光物、あなご、はまぐりなんかの昔ながらの仕事こそ、鶴八本流の伝統的技術が発揮されているものです。(とはいえ、こちらはタワー盛りのうにや、太巻きのまぐろが人気だったりもするのですが・・・)
お茶でこれらをいただくと、これで大体1万円を超えるあたり、1.5万円にはまだ間があるというくらいのお勘定に落ち着きます。もちろん、おまかせがよろしいという方には、親方が見繕ってくれます。それでも3万、4万というような、流行りの寿司屋のような勘定には、そうそうならないでしょう(注文次第ですが)。
高レベルな江戸前寿司の名店としては、現代では相当に真っ当、リーズナブルな価格かと思います。
お茶で食べても、肩身が狭くない。酒飲みにだって寛容。好きなものを好きなように食べられる、こういうお店こそ、賞賛すべき良心的な名店だと、強く推奨できるものです。